【読書メモ】デッドエンドの思い出―よしもとばなな
そうだ、最近普通の小説を読んでないなーと思ったので図書館で借りてきました『デッドエンドの思い出』。
- 作者: よしもとばなな
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2003/07/26
- メディア: 単行本
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よしもとばななは、中学生の頃に『TSUGUMI』を読んで以来、なぜか合わないと思ってしまったので随分読んでいませんでした。ここに来て、なぜまた手に取ったかというと、先日吉本隆明さんが亡くなったから。本当は、吉本隆明さんの本を読もうと思っていたのですが、話題の人の本はすでに予約が入っているものなのですよね。
デッドエンドとは「袋小路」あるいは「どん底」という意味ですが、わたしはどん底だとは思いませんでした。すべての短編に共通しているのは「その時どん底だと思っても、時間は流れ続けるし、世界は変わらずに回り続ける」ということだと感じました。たとえ自分がいなくなっても、あらゆる事柄は終わりではないということに主人公たちが気づいていることも共通しています。
確かに、主人公たちは明るい境遇にいるとはいえないけれど、必要以上に悲観的になったり、自暴自棄になってしまわないある種の「ユルさ」に好感を覚えました。
お気に入りは「幽霊の家」です。
個人的にはっとしたのは、主人公が洋食屋で働くことに対して持っているプロ意識。
「誰にとっても、私の作ったものが最後の食事になりかねない、そういう仕事をしていることをいつまでも忘れないでいようと思った。」
恋愛小説としてだけでなく、自分と周囲との関係性を見直すきっかけになりそうな本です。