OkOgeのブログ

地方で楽しく生活することをテーマに日々あったことをつづります。

そして父になる

そして父になるを観た。金曜ロードショーで。


自分が同じ立場に置かれた親だったらどうするかな〜としばらく考えてしまった。

作中、病院側の説明では昭和40年代に取り違えが多く起こったときには、ほとんどの家族が交換を希望したとのこと。

「本来あるべき姿」になったと言えばそうなのだけど、それでいいの?って思ってしまう。

そんなに生物的に親子であることは重要なんだろうか?


生みの親より育ての親というように、わたしならそれまで育ててきた方をとると思う。


本当の子でなくても、それまでその子に注いできた愛情は本物。

いくら血がつなかっていても、他の家庭で育った子はその家の文化に浸りきっていて、まったく別の家の子になっているだろうから。


映画のタイトルから想像していたのは、本当の子を取り戻して家族を再建する中で「父になる」というもの。

実際はそうじゃなかった。

むしろ家族のあり方を見直す機会になっていたので、良かった。


血のつながらない家族に対する考え方が出るところだと思う。

取り違えなんて起きてはいけないことだけれど、それをどうとらえるかは国や時代によってかなり違うんじゃないかな。


今年も家族をテーマにした作品を是枝監督がメガホンをとっているらしい。

【読書メモ】もう自己啓発本はいらない?!/嫌われる勇気

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教えは去年の話題の一冊らしい。

積極的に他人から嫌われたいと思う人はいないはず。特に日本人は、「嫌われる」ことをひどく恐れる人種だと思うので、このタイトルは衝撃的だったのかも。


わたしにとっての衝撃ポイントは少し違うところにあった。

すべての悩みは対人関係の悩み

たしかに。って思った。

なぜあの人といるとイライラするのか、イライラしない方法はないものかと思っていた。

怒る原因があるから怒ると、普通は思うのだけどアドラーによると違うらしい。

怒りたいから怒るのだそう。

怒ることによって、何かをしたいという目的があるからこそ怒る。たとえば、相手に言うことをきかせたいとか、自分の方が優位に立ちたいとか。


怒りをコントロールするとか、我慢するという発想は、対人関係の中で「自分が正しい」という権力争いに足を踏み入れていること。

だから「ついカッとなって」というのはありえないことになる。

対人関係の悩みを解決する方法は、自分の課題と他人の課題とを仕分けること。

馬を水辺に連れて行くことはできるが、水を飲ませることは出来ないから。


人の期待に沿って生きることの不自由さ、本当の自由とは何かということを考えさせてくれる。

仕分けのコツは、その選択によってもたらされる結末を最終的に引き受けるのは誰かを考えること。

本の中では課題の仕分けができていない例として、親子のシーンが出てくる。

親が「子のためを思って」勉強しなさいと言うのは、他人の課題に介入する自己チューな発想だという。


じゃあ、たとえ親子でも人は人、自分は自分と割り切ってクールに生きることがいいと言いたいのかというとそうではないということがこの本を読むと分かる。


これまで、人生を山登りのような線としてとらえていたわたしにとってはちょっと驚きと気づきがあった。

「まだ本気出してない」的な発想をしている人にはオススメの本。

嫌われる勇気

嫌われる勇気





【読書メモ】水やりはいつも深夜だけど

水やりはいつも深夜だけどは幼稚園生の子を持つ母親や父親の、日常の心の揺れを描く短編集。


各物語のタイトルにもあるとおり、物語の中には植物が出てくる。

植物を育てるには水やりが必要だけど、みんな日中に水やりをする心の余裕はないように見える。


どれも日々の生活でありがちな光景を切り取った作品なのに、ありがちなものをどれだけ鮮明にみずみずしく描くかというのが作家の筆力なんだと思う。

5つある短編の中で、一番いいなと思ったのは最後の「かそけきサンカヨウ」。

家族の形が変わっても、それに抵抗するとか無関心とかではなくて、みんなで暮らしていくんだという前向きな雰囲気が伝わってきたから。

逆に、嫌だなと思ったのは「ちらめくポーチュラカ」。

人に嫌われたくないがために有名人の服装やコメントをチェックして、それを参考にしながら日々ママ友と付き合い、ブログの写真用に食事とかインテリアなんかを飾るところが。


とっても面倒くさい!!

わたしにはとても無理だけれど、人に「嫌われない」努力はしてもいいのかなぁと思った。



ところでこの短編集は同じ幼稚園に通う子供の親という設定らしい。

5つの物語は完全に独立しているように見えたので、どこかでつながっていたらもっとおもしろかったかもな〜って思った。

水やりはいつも深夜だけど

水やりはいつも深夜だけど



トークショーって難しい!!角田光代さんのイベントで

角田光代さんのトークショーに行ってきた。

小豆島土庄町の中央図書館10周年記念イベント。

数ヶ月前に、町の図書館の貼り紙を見て行きたいと思っていたのだけど、有名な作家だからすぐ整理券がなくなるかと思いきや配布開始から2週間過ぎて申し込んでもまだまだ余裕だった。

当日もガラガラなのかと思っていたら、高松だけでなく、なんと芦屋から来ていた人もいてびっくり!



わたしの関心は、何冊か読んだことのある角田光代はどんな人なのか。
八日目の蝉の舞台に小豆島を選んだことについて。



角田光代さんは、自称トークが苦手とのことで、講演会のような仕事は受けないらしい。

対談方式であれば、ということで今回のトークショーを引き受けたのだとか。

八日目の蝉は、新聞連載小説。
どうすれば読者が続けて読んでくれるかを考えた結果、主人公が逃げ続ける物語になった。

小豆島が逃亡先になったのは、担当者がちょうど二十四の瞳村の記念イベントに行ったことから。

「小豆島よかったですよ」の一言で、小豆島への取材が決まった。

かんかけタクシーの運転手さんに、島の見どころを一日案内してもらって、なんて豊かな島なんだと実感したという。

特に感銘を受けたのは、瀬戸内海に沈む夕日。
神奈川の太平洋の海とは違って静かな海。

この景色をラストシーンにすることを決めた。


小豆島を舞台にした作品をまた書く予定はないかという質問には、かなり難しいと答えた。

八日目の蝉を書く過程で、何度も追体験したので別の作品を書くとしたらまったく別のアングルが必要になる。

八日目の蝉では、主人公が「ここに住もう」と切望した島なのに、出て行きたい大嫌いな島という設定が必要。ということだった。



角田さんはおしゃべりではないけれど、小説と同じように明快な語り口だった。

気になったのは、トークショーという形式なのに会話になっていなくて、Q&A方式になってしまっていたこと。

司会者は主役の話を引き出すように采配するのが役目だし、質問者はあくまで質問者なのであって自分の話をする場所ではない。

質問者の話が長くて、角田さんの話は思っていたより聞き出せていない感じがした。

インタビュアーや司会者って、実はかなり高度な技量が必要なのに主催者はそれを認識していないのかも。

プロを連れてくれば良かったのになーと思ってしまった。

主役に気持ちよく話してもらって、また来てもいいなと思ってもらうことが大切なのじゃないかしら。

せめて、阿川佐和子さんの聞く力―心をひらく35のヒント (文春新書)でもよんでからにしてもらえば、もっとおもしろいトークショーになったのになぁ。

聞く力―心をひらく35のヒント (文春新書)

聞く力―心をひらく35のヒント (文春新書)

【読書メモ】水の出会う場所

小説を読むのがちょっとしたマイブーム。

魚住陽子氏の水の出会う場所を読んだ。

何度も芥川賞候補になったというだけあって?、とてもきれいな文章を書く作家だと思った。

静かに心に染み入ってくるような。

表現も、使われている漢字もちょっと難しいものが出てくるけれど。

水の出会う場所には、3つの短編が収録されている。テーマは老いとか、命。


出版社の紹介文には「瑞々しく、清々しい」とあるけれど、寂しさを感じた。


それとなく書かれている部分も多くて、よく読まないとなんだったの?と思うところも。小説って、じっくり読むものなんだなと思わせてくれた本。


わたしには最初の、緑の擾乱(じょうらん)が一番好き。

水の出会う場所

水の出会う場所

【読書メモ】電子書籍は二冊目に向いてる?!/知の読書術

読書術についての多くの本を書いている佐藤優氏。

「知」の読書術 (知のトレッキング叢書)も、他の読書術の本と大方共通することを言っているのだけど、違いは2部構成のうち後半の2部を電子書籍の活用法について書いている点。


わたしはAmazonを中心に電子書籍が出始めてから、電子書籍を買うようになった。

移動中に気軽にスマホで本が読めるというのがその理由。

年間に数百冊以上の読書をしている著者が電子書籍をどうとらえているかに興味があった。

著者によると、日本の電子書籍のコンテンツはまだまだ貧弱とのこと。マンガや、新書のようなサッと読めるものはそれなりに数はあるものの、古典や教科書などじっくり読みたいものの電子化が進んでいない。

だから、読書の中心に電子書籍を置くというのは難しいのではということだった。


じゃあ、電子書籍は使えないのかというとそうではない。

移動図書館としての使い道はとても魅力的だから。紙の本だと、気になった文は書き留めておくか記憶に頼るしかないけれど、電子書籍ならあれ、なんだったっけ?というものがあれば、パッと探すのも簡単だ。

さらに、電子書籍は二冊目の利用に適していると言っている。

古典や教科書は、一度通読するだけでなく暇があれば何度でも読み直すのがいいとのこと。

「情報と、教養は違うもので、読書は教養を身につけるためのもの。教養こそ、物事の行間を読み解くには必要なものだ。」
という主張は理解できるものの、同じものを何度も読むのはなかなかしんどいことだなぁと思った。


紙の本なら目に入るのでまだ読むこともできそうだけど、デバイスの中にあって目に入らないところにあると自分から読もうとするにはかなりのエネルギーが要りそう。

それができる人は、必要に迫られてのことだと思う。著者のように読書が仕事になっている人とか。

その必要を感じられる人が、「教養」ある人ってことなのかな。

「知」の読書術 (知のトレッキング叢書)

「知」の読書術 (知のトレッキング叢書)


【読書メモ】自分を好きになる方法

自己啓発本ではありません。

またまた帯を見て、手に取った自分を好きになる方法

一人の女性の16歳、28歳、34歳、47歳、63歳、3歳のある1日を切り取ってコラージュした小説。

どの一日も、ドラマックな出来事や人生の転機などというような大それた一日じゃない。

共通するのは、「心から一緒にいたいと思える誰か」を探しているということ。


仲良くなれそうな人に近づいていくのだけど、ふとした瞬間にやっぱり違うなと感じてサーっと潮が引いていくような感覚。

誰もが感じたことがあるんじゃないかな。


友達作りって子どもに限ったことではなくて、ずっと付き合っていける人を見つけるのはどの世代にも必要なことなんだと思う。

恋愛関係を元にした男女の形は夫婦になっても、どちらかが先にいなくなるものだし、子供もいつか巣立っていく。

特定の人間関係にもたれかかってしまうと、結局しんどくなるのは自分なんだろうな。

年をとるにつれて、自分の感情の揺れや周りとの距離の取り方なんかのあしらいはうまくなるものの、わたしたちはいくつになっても分かり合える人を探しているのかも。

たとえ疎遠になったとしても、友達関係メンテナンスした方がいいなと思った本。


自分を好きになる方法

自分を好きになる方法