【読書メモ】心に残るのは、面倒なこと。感情の揺れ
角田光代の旅にまつわるエッセイ集『降り積もる光の粒』を読んだ。
- 作者: 角田光代
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2014/08/29
- メディア: 単行本
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よくある旅先の記録のようなエッセイ集ではなく、旅することに対する著者の思いやこだわり、旅にまつわる記憶について多くのページが割かれている。
著者は仕事がらみも加えると、年に数回は旅行に行くという。しかも、外国をひとりで旅することが多いというから相当旅慣れているのかと思えばそうではないらしい。事前の下調べをしないので、いつも他人から見るとトラブルだらけの旅になるという。
それでもひとり旅をする最大の理由は、著者は優柔不断なところがあるので誰かと行くとその人に感化されてしまうからだそう。
ちょっといいなと思ったくだりはこれ。
ひとり旅ならば、自分の感覚しかない。何をうつくしいと思い、何をきたないと思い、何をおいしいと思うか、自分自身を信じるしかない。そうすると、自分ですら知らなかった、まったく新しい自分に、出会えることも多いのである。旅の記憶も純度が高まる。それは、ひとり旅の無駄さ、面倒さ、心細さ、すべての欠点にもまさる重要なことなのだ。私にとって。
わたしはひとり旅をほとんどしたことがないけれど、これを読んで学生のときにしておけばよかったなぁと思った。
旅先で記憶に残ることはいつも「面倒な非マニュアル」、「面倒とはつまり、感情の揺れ」。
そのぶれが大きくなればなるほど面倒も大きくなるが(中略)旅を終えて覚えているのは、感情が揺れ動いたことになる。
これは旅に限らず、日常でも同じことが言えるんじゃないかなと思った。
現代の作家の中では、角田光代は好きな方だ。
読書の楽しさは、自分が言葉にしていない何かを作家が言語化してくれているのを見つけることにあるように思う。
小説やエッセイのようなものの場合は特に。角田光代の書く文章は、地に足が着いているけれど、決して無味乾燥ではない。きれいだなと思うところもある。
いつか、観光を楽しむというより、移動そのものを楽しむ旅をしてみたいなぁと思った本でした♪